Kimi K3 とは - 2.8兆パラメータのオープンMoEを読み解く(アーキテクチャ・ベンチ・ウェイト公開)

Kimi K3 とは - 2.8兆パラメータのオープンMoEを読み解く(アーキテクチャ・ベンチ・ウェイト公開)

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オープンウェイトのフロンティアが、また一段跳ね上がりました。2026年7月16日、Moonshot AI が Kimi K3 を発表しました。総パラメータ 2.8兆(2.8T)のスパース MoE で、文脈長は 100万トークン。同社は「世界初のオープン3兆クラスのモデル」と位置づけています。ただし記事公開時点(2026-07-18)ではウェイトはまだ公開されていません。この記事では Moonshot AI の公式ブログを一次ソースに、確定した事実と未確定の部分を切り分けて整理します。

オープンウェイトのコーディング/エージェント系モデルの流れは、GLM-5.2MiniMax M3の記事でも追ってきました。K3 はそこからさらに規模を一段引き上げた一手です。

Kimi K3 とは

  • 発表: 2026年7月16日。同日に API と各アプリで提供開始
  • 提供: Moonshot AI(北京。Kimi ブランドの開発元)
  • 規模: 総パラメータ 2.8兆のスパース MoE。896エキスパート中16を活性化
  • 文脈長: 100万トークン
  • ウェイト: フルのモデルウェイトを 2026年7月27日までに公開予定(記事公開時点では未公開)

Moonshot AI は K3 を「これまでで最も高性能なモデル」と表現し、あわせて「世界初のオープン3兆クラスのモデル」を標榜しています。ここで注意したいのは、「オープン」を名乗りつつ、発表時点ではウェイトがまだ手に入らないという点です。API では今すぐ使えますが、自前ホストや独立検証は公開日(7月27日まで)を待つ必要があります。

WARNING

「オープンウェイト」という表現に対し、記事公開時点(7/18)ではウェイトは未公開です。公開は7月27日までに予定されている段階で、「公開済み」ではありません。ライセンス種別も公式では明記されておらず未確認です(K2系が Modified MIT だった前例はありますが、K3 に同じ条件が適用されるかは公開まで確定しません)。

スペック早見表

項目
発表日2026年7月16日
総パラメータ2.8兆(2.8T)のスパース MoE
エキスパート896エキスパート中16を活性化
文脈長100万トークン(1M)
アーキテクチャKimi Delta Attention(KDA)/ Attention Residuals(AttnRes)/ Gated MLA
学習フレームワークStable LatentMoE(公式表記)
ウェイト公開2026年7月27日までに予定(記事公開時点で未公開)
ライセンス公式未明記(未確認)

規模の読み方としては、総パラメータが2.8兆と巨大でも、1トークンあたり実際に動くのは896分の16のエキスパートだけ、というのが MoE の勘所です。総容量で知識を蓄えつつ、推論時の計算は活性化したエキスパートに絞ることで、密(dense)な巨大モデルよりも1トークンあたりのコストを抑えます。

NOTE

1トークンあたりのアクティブパラメータ数について、一部の解説では「約50B」といった数値が挙げられていますが、これは公式ブログで確認できた表記ではないため、本記事では二次的な推定として扱い断定しません。公式が明記しているのは「896エキスパート中16を活性化」という比率です。

アーキテクチャ: KDA・AttnRes・Gated MLA

K3 のアーキテクチャの核として、公式ブログは3つの要素を挙げています。

  • Kimi Delta Attention(KDA): 注意機構の中核。長文脈を効率よく扱うための仕組み
  • Attention Residuals(AttnRes): 注意計算に残差的な経路を持たせる設計
  • Gated MLA: ゲートを介した注意の選択性を担う仕組み

これらを Stable LatentMoE というフレームワーク上で学習した、というのが公式の説明です。100万トークンという長い文脈を「持てる」だけでなく、実用的なコストで「処理できる」ことを狙った設計思想は、MiniMax M3の MiniMax Sparse Attention(MSA)や、GLM-5.2の Dynamic Sparse Attention とも通じる方向性です。長文脈 MoE の各社が、それぞれ独自の注意機構で per-token 計算量を抑えにきています。

NOTE

KDA による高速化倍率(たとえば最大6.3倍)や、AttnRes による学習効率の向上(たとえば25%)といった具体的な数値は、一部の技術解説では紹介されていますが、公式ブログで確認できた値ではありません。書くとしても「一部の解説によれば」という留保が必要で、本記事では確定事実としては扱いません。実装や論文の詳細はウェイト公開時の技術資料を待つのが確実です。

ベンチマークをどう読むか

ベンチマークは「見出し」だけを追うと印象を誤りやすいので、確認できる範囲で整理します。

指標Kimi K3補足
Artificial Analysis 総合 Elo1547Kimi K2.6 から +732。総合では Claude Fable 5 に次ぐ2位相当と広く報道
Arena Frontend Code1679(1位)フロントエンドコード評価で Claude Fable 5 を上回ったと広く報道
DeepSWE67.3公式記載(mini-SWE-agent ハーネス使用)

読み取れる位置づけは次のとおりです。

  • 総合力では最上位に肉薄: Artificial Analysis の総合 Elo 1547 は、Claude Fable 5に次ぐ2位相当という報道が広く見られます
  • フロントエンドコードでは首位: Arena の Frontend Code で1位(1679点)となり、Claude Fable 5 を上回ったと報じられています
  • ただし万能ではない: 広範な知識や長時間タスクでは、Claude Fable 5 や GPT-5.6 Solに劣後する、という位置づけです

WARNING

Artificial Analysis の Elo(1547)や Arena Frontend Code(1位/1679)は、公式ブログ自体ではなく第三者評価プラットフォームおよびそれを引く報道に基づく数値です。本記事では「広く報道」と出典の性質を明示しています。公式ブログで直接確認できたベンチは DeepSWE 67.3 です。ベンチは選び方で印象が変わるため、数値は出典と前提を確かめて読むのが安全です。

つまり「特定の評価軸(フロントエンドコード)ではトップ」だが、「あらゆる用途で最強」ではない、というのが妥当な理解です。得意領域と不得意領域がはっきりしているモデル、という読み方をおすすめします。

API 料金と使い方

K3 は発表と同時に API で提供が始まっています。料金体系は次のとおりです。

区分単価(per 1M tokens)
入力(キャッシュヒット)$0.30/MTok
入力(キャッシュミス)$3.00/MTok
出力$15.00/MTok

入力単価が「キャッシュヒット」と「キャッシュミス」で10倍差になっている点がポイントです。同じ長いコンテキスト(システムプロンプトや大きなコードベース)を繰り返し使うワークフローでは、プロンプトキャッシュが効く設計にできるかどうかでコストが大きく変わります。出力単価 $15.00/MTok は安価とは言えない水準で、前世代の Kimi K2.6(報道では入力 $0.95・出力 $4.40 前後)から大きく引き上げられています。

API の呼び出しは OpenAI 互換の形式が一般的です。実際のエンドポイントやモデル ID は公式ドキュメントで確認したうえで、次のような形になります。

Chat Completions(OpenAI互換の一例)
curl https://api.moonshot.ai/v1/chat/completions \
  -H "Authorization: Bearer $MOONSHOT_API_KEY" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{
    "model": "kimi-k3",
    "messages": [
      {"role": "system", "content": "You are a helpful coding assistant."},
      {"role": "user", "content": "この関数のバグを直して。"}
    ],
    "temperature": 0.3
  }'

レスポンスは OpenAI 互換の JSON で返るのが通例です。

レスポンス(形式の一例)
{
  "id": "chatcmpl-xxxx",
  "model": "kimi-k3",
  "choices": [
    {
      "index": 0,
      "message": { "role": "assistant", "content": "..." },
      "finish_reason": "stop"
    }
  ],
  "usage": { "prompt_tokens": 1234, "completion_tokens": 567 }
}

NOTE

上記の URL・モデル ID・パラメータは OpenAI 互換 API の一般的な形に沿った例です。実際の値は公式ドキュメントで確認してください。なお K3 は現状「max」に相当する推論設定が中心で、簡単なタスクでも出力トークンが多くなりコストが膨らみやすい、という指摘が一部報道にあります。短い応答で足りる用途では、単価だけでなく実際のトークン消費量も含めて見積もるのが安全です。

ウェイト公開はこれから(7月27日まで予定)

繰り返しになりますが、記事公開時点(2026-07-18)でK3 のウェイトはまだ公開されていません。公式は「フルのモデルウェイトを2026年7月27日までに公開する」としています。したがって現時点でできることと、公開後にできることは分けて考える必要があります。

  • いまできること: API で自分のタスク・コードベースに対する挙動を評価する
  • 公開後にできること: ウェイトを使った自前ホスト、量子化、独立ベンチによる検証

2.8兆パラメータという規模は、フル精度ではローカル環境に載せるのが現実的ではありません。公開後は量子化版が出るかどうか、どの程度のメモリで動かせるかが焦点になります。手元で動かす選択肢を検討する際は、ランタイム比較をまとめたローカルLLMランタイム比較 2026もあわせて参照してください。

WARNING

ライセンス種別は公式で明記されておらず未確認です。K2系が Modified MIT だった前例はありますが、K3 の商用利用可否や再配布条件は、ウェイト公開時のライセンス文書で確定します。導入判断はライセンス確定後に行うのが安全です。

位置づけ: 他のオープンウェイトとの棲み分け

2026年のオープンウェイトは、単一の「最強」を追うより、用途で選ぶ局面に入っています。

  • Kimi K3: 2.8兆規模の総合力とフロントエンドコード首位。ただし規模が大きく、手元で動かすには公開後の量子化待ち
  • GLM-5.2: 744B級・MIT ライセンスで、コーディングベンチ上位。ライセンスの明確さが強み
  • MiniMax M3: より軽量で長文脈+PC操作。ローカル寄りの選択肢

K3 の差別化点は、2.8兆という規模とフロントエンドコードでの首位にあります。一方で、規模が大きいぶん自前ホストのハードルは高く、ライセンスも未確定です。総合力で最上位級に迫りつつ、得意(フロントエンドコード)と不得意(広範な知識・長時間タスク)がはっきりしている、というのが現時点での実像です。

まとめ

  • Kimi K3 は Moonshot AI が2026年7月16日に発表した、総パラメータ 2.8兆のスパース MoE(896エキスパート中16を活性化)、文脈長 100万トークンのオープンウェイト大規模 LLM
  • アーキテクチャの核は Kimi Delta Attention(KDA)・Attention Residuals(AttnRes)・Gated MLA。学習は Stable LatentMoE
  • API 料金は入力 $0.30/MTok(キャッシュヒット)・$3.00/MTok(キャッシュミス)、出力 $15.00/MTok
  • ベンチは Artificial Analysis 総合 Elo 1547(総合2位相当と報道)、Arena Frontend Code 1位(1679)、公式記載の DeepSWE 67.3。ただし Elo と Arena は第三者評価・報道ベース
  • ウェイトは記事公開時点で未公開。公開は2026年7月27日まで予定。ライセンスは未確認

「オープン3兆クラス」という規模の到達は大きな出来事ですが、現時点ではAPI で試せるが手元では動かせない段階です。数値は出典と前提を確かめ、ウェイトとライセンスの公開を待って、自分のタスクで評価するのが確実な向き合い方です。

参考リンク

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