
Claude の advisor tool 入門 - 速いexecutorモデルに賢いadvisorモデルの助言を挟むツール使用パターン
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「賢いモデルは高いが質が高い、速いモデルは安いが判断を誤ることがある」——この二択に、Anthropic が新しい答えを出しました。advisor tool(アドバイザーツール)です。速くて安いexecutor(実行)モデルが、生成の途中で賢いadvisor(助言)モデルに相談し、要所だけ上位モデルの判断を借りる、というツール使用のパターンです。本記事では、Anthropic 公式ドキュメントを一次ソースに、仕組み・使い方・コスト・落とし穴を整理します。
NOTE
advisor tool はベータ機能です。リクエストに beta ヘッダ advisor-tool-2026-03-01 を付与して利用します。仕様はベータ期間中に変わる可能性があるため、実装前に公式ドキュメントで最新を確認してください。
advisor tool とは
advisor tool は、安価な executor モデルに、上位の advisor モデルの「戦略的な助言」を途中で挟み込む仕組みです。流れはこうです。
- executor が「ここは相談すべき」と判断した時点で advisor を呼ぶ
- Anthropic のサーバー側で、advisor モデルが会話の全文(システムプロンプト・ツール定義・これまでのやり取り・生成途中のテキスト)を読み、計画や軌道修正を返す
- executor はその助言を受けて、続きの生成を進める
ポイントは、これがすべて 1 回の /v1/messages リクエスト内で完結することです。あなたの側で追加のラウンドトリップは不要で、web_search などと同じサーバーツールとして動きます。
狙いはコスト対効果です。トークン生成の大半は安い executor が担い、計画が重要な数箇所だけ advisor が助言するため、「advisor 単体に近い品質」を「executor 単体に近いコスト」で得ることを目指します。コーディングエージェント、コンピュータ操作、多段のリサーチパイプラインのような長工程のエージェント処理——大半の手順は機械的だが、良い計画が効いてくる——に向いた設計です。
いつ使うか、いつ使わないか
公式が挙げる典型的な組み合わせは次の 2 つです。
- いま複雑なタスクで Sonnet を使っている: advisor に Opus を足すと、同等かそれ以下の総コストで品質が上がる
- いま Haiku を使っていて知能を一段上げたい: advisor に Opus を足す。Haiku 単体より高くつくが、executor 自体を大きいモデルに替えるより安い
逆に向かないケースも明記されています。
- 単発の Q&A(計画する余地がない)
- ユーザー自身がコストと品質を選ぶパススルー型のモデル選択
- 毎ターンが本当に advisor 級の能力を要するワークロード
効果はタスク依存です。公式も「自分のワークロードで評価せよ」と繰り返しています。
最小の使い方
beta ヘッダを付け、tools 配列に advisor ツールを 1 つ足すだけです。executor は最上位の model、advisor はツール定義内の model で指定します。
curl https://api.anthropic.com/v1/messages \
--header "x-api-key: $ANTHROPIC_API_KEY" \
--header "anthropic-version: 2023-06-01" \
--header "anthropic-beta: advisor-tool-2026-03-01" \
--header "content-type: application/json" \
--data '{
"model": "claude-sonnet-4-6",
"max_tokens": 4096,
"tools": [
{ "type": "advisor_20260301", "name": "advisor", "model": "claude-opus-4-8" }
],
"messages": [
{ "role": "user", "content": "Go で graceful shutdown 付きの並行ワーカープールを作って。" }
]
}'ツール定義の必須・任意パラメータは次のとおりです。
| パラメータ | 型 | 既定 | 説明 |
|---|---|---|---|
type | string | 必須 | "advisor_20260301" 固定 |
name | string | 必須 | "advisor" 固定 |
model | string | 必須 | advisor モデル ID(例 claude-opus-4-8)。このサブ推論はこのモデルの料金で課金 |
max_uses | integer | 無制限 | 1 リクエスト内での advisor 呼び出し上限。超過分は max_uses_exceeded エラーになり、executor は助言なしで続行 |
max_tokens | integer | advisor の出力上限 | 1 回の advisor 出力(思考+本文)の上限。最小 1024 |
caching | object | null | advisor 自身の会話に対するプロンプトキャッシュ。形は {"type":"ephemeral","ttl": ...} で ttl は 5m か 1h |
動作の仕組み
executor が advisor を呼ぶと、アシスタントの content に次の 2 ブロックが現れます。
server_tool_use(name: "advisor"、inputは常に空)。executor は「呼ぶタイミング」だけを示し、文脈はサーバーが供給しますadvisor_tool_result(advisor の助言)
{
"type": "server_tool_use",
"id": "srvtoolu_abc123",
"name": "advisor",
"input": {}
},
{
"type": "advisor_tool_result",
"tool_use_id": "srvtoolu_abc123",
"content": {
"type": "advisor_result",
"text": "channel ベースの協調パターンを使うとよい。難所はシャットダウン時の in-flight..."
}
}advisor はツールなし・コンテキスト管理なしで走り、思考ブロックは破棄され、助言テキストだけが executor に届きます。advisor 用のシステムプロンプトは Anthropic 側が用意し、executor のトランスクリプトは引用された文脈として advisor の入力に入ります。
結果は 2 種類
advisor_tool_result.content は判別可能なユニオンで、advisor モデルによって形が変わります。
advisor_result:text(人が読める助言)。Opus など通常のモデルadvisor_redacted_result:encrypted_content(読めない暗号化ブロブ)。Claude Fable 5 / Mythos 5 が該当
いずれも次ターンにそのまま(verbatim)返送します。暗号化版はサーバーが次ターンに復号して executor のプロンプトへ展開します。advisor モデルを会話の途中で切り替える場合は content.type で分岐してください。
呼び出しが失敗した場合は advisor_tool_result_error が返り、error_code は max_uses_exceeded / too_many_requests / overloaded / prompt_too_long / execution_time_exceeded / unavailable のいずれか。リクエスト自体は失敗せず、executor は助言なしで続行します。
対応モデルの組み合わせ
advisor はClaude Sonnet 4.6 以上で、かつexecutor と同等以上に賢い必要があります(同格同士、例えば Opus 4.7 と 4.8 は相互に助言可能)。主な組み合わせは次のとおりです。
| executor | 指定できる advisor |
|---|---|
| Haiku 4.5 | Sonnet 4.6 / Opus 4.6・4.7・4.8 / Fable 5 / Mythos 5 |
| Sonnet 4.6 | Sonnet 4.6 / Opus 4.6・4.7・4.8 / Fable 5 / Mythos 5 |
| Sonnet 5 | Opus 4.7・4.8 / Fable 5 / Mythos 5 |
| Opus 4.8 | Opus 4.7・4.8 / Fable 5 / Mythos 5 |
| Fable 5 | Fable 5 のみ |
| Mythos 5 | Mythos 5 のみ |
無効な組み合わせは 400 invalid_request_error になります。モデルの系譜はClaude Fable 5 / Mythos 5 の記事やOpus 4.8 の記事も参照してください。なお提供はClaude API と Claude Platform on AWS(ベータ)で、Amazon Bedrock・Google Cloud・Microsoft Foundry では現時点で未提供です。
課金の見え方
advisor 呼び出しは別のサブ推論として advisor モデルの料金で課金され、usage.iterations[] に内訳が出ます。
"iterations": [
{ "type": "message", "input_tokens": 412, "output_tokens": 89 },
{ "type": "advisor_message", "model": "claude-opus-4-8", "input_tokens": 823, "output_tokens": 1612 },
{ "type": "message", "input_tokens": 1348, "cache_read_input_tokens": 412, "output_tokens": 442 }
]- トップレベルの
usageは executor 分だけ。advisor のトークンは料金が違うため合算されません type: "advisor_message"の反復が advisor 料金、type: "message"の反復が executor 料金- advisor の出力はおおむね 400〜700 テキストトークン(思考込みで 1,400〜1,800 トークン)。あなたの最終成果物を生成しないぶんが節約になります
コスト面はClaude Code のトークン消費とコストの記事の考え方も参考になります。
コストを抑える 3 つの手段
max_tokens(ツール定義側)で advisor 出力を上限化。最小 1024、推奨は2048。Anthropic の計測では、難しい推論タスクで advisor 出力が無指定比約 7 分の 1になり、ほぼ切り詰めなし・品質劣化も検出されずとのこと。上限に達するとstop_reason: "max_tokens"が付き、助言末尾に切り詰めの注記が入りますcachingで advisor 側のプロンプトキャッシュ。advisor のプロンプトは呼ぶたびに 1 セグメント増えるだけなので前方一致が安定します。3 回以上呼ぶ会話で得になり、2 回以下だと書き込みコストが上回ります。長いエージェントループでのみ有効化をmax_usesで 1 リクエスト内の回数を制限。会話全体の上限が欲しい場合はクライアント側で回数を数え、上限に達したらtoolsから advisor を外し、履歴中のadvisor_tool_resultも全て取り除きます(残すと400になります)
実運用のコツ
- 組み込みの説明文で、executor は複雑なタスクの序盤や行き詰まり時に advisor を呼ぶよう促されます。コーディング系は過少呼び出しになりがちなので、公式の「推奨システムプロンプト」を先頭に足すと、序盤 1 回+完了前 1 回の呼び出しが安定します
- Haiku executorが初手で呼ばない場合、2 ターン目の前に短いリマインダ(nudge)をユーザーメッセージで挟むと、Anthropic の内部評価で合格率が約 7 ポイント向上。ただし Sonnet では効果なし、Opus では逆効果なので付けないこと
- effort との併用: コーディングでは Sonnet executor を medium effort にして Opus advisor を付けると、Sonnet を既定 effort で使うのに近い知能をより低コストで得られます
WARNING
advisor サブ推論はストリーミングされません。server_tool_use ブロックが閉じた時点で executor のストリームは一時停止し(約 30 秒ごとの ping のみ)、advisor 完了後に結果が一括で届いてから executor の出力が再開します。また、フォローアップで履歴に advisor_tool_result があるのに tools から advisor を外すと 400 になります。
まとめ
- advisor tool は、安い executor が要所で賢い advisor に相談するツール使用パターン。1 リクエスト内で完結するサーバーツールです(beta ヘッダ
advisor-tool-2026-03-01) - 定番は Sonnet + Opus(同コストで品質向上)や Haiku + Opus(安価に知能を一段上げる)。単発 Q&A には不向き
- 課金は
usage.iterationsに分離。max_tokens・caching・max_usesでコストを制御できる - Fable 5 / Mythos 5 は暗号化結果(
advisor_redacted_result)を返す点、advisor_tool_resultを外すと400になる点に注意
「モデルを 1 つ選ぶ」から「速いモデルに賢いモデルの判断を差し込む」へ——エージェント設計のコスト対品質の選択肢を一つ増やす機能です。長工程のエージェントを運用しているなら、自分のワークロードで A/B する価値があります。関連してClaude Code のバージョン履歴やプロンプトキャッシュの記事もどうぞ。
参考リンク
- Advisor tool(Claude Platform Docs・一次ソース)
- Introducing advanced tool use on the Claude Developer Platform(Anthropic Engineering)
- Tool use with Claude(概要)


